馬鹿にしないでよ、そっちのせいよ Part I
ついている男、持っている男の周りでは、ありえないことが度々起こる。着物パーティーでの失神騒動に引き続いて、こんどは厄介な事件が起きた。水曜日は、隔週で休診もしくは午前診療のみにしている。空いている時間を有効利用するため、そして健康維持目的のため、特別な事情がない限り、水曜午後はスイミングと決まっている。空腹で泳いだ後は、某ハンバーガーショップで期間限定のハンバーガーを食べ、季節のシェイクを飲むのが至福だ。
12月7日水曜日、泳いだ後、いつものハンバーガーショップを訪れた。現在なら、とびきりアボガトコロッケに抹茶シェイクが僕のおすすめ。疲れた体にとびきりのランチ、そしてそこで読む雑誌「LEON」。疲れに身を任せ、何も考えずに過ごす時間は何と心地いいことか。快適な時間を過ごし、僕が助手席、妻が運転席に乗り込んで今からエンジン・スタートボタンを押そうとしていた矢先、レクサスLXの左後方からフラフラと車が接近してくるのが見えた。どうも我々の左隣りに車を停めようとしている。広い駐車場で、そこここにスペースが空いているにも関わらず、わざわざ大きな車の隣の狭いスペースに駐車しようとしてくる。エンジンをかけることも出来ず、しばし様子を伺っていたが、どうにもこうにも運転がおぼつかない。「当たらないようにしなければ!」危険を察知した僕が車から降りようとした瞬間、妻が「わっ!当たった!」と声を上げた。すると、その車は何事もなかったかのように、すぐさま別のスペースに駐車した。
即座に車を降り、当たったと思われる部位を確認した。白ボディのため明らかなこすり傷は見られなかったものの、黒いシミのようなものが付着している。「車、当てましたよ!」、運転席から出てきた高齢男性を問いつめた。すると、「当ててないよ。」としらばくれる。しばらく押し問答したが、自分の非を全く認めようとせず、とぼけた態度に終始。確認のため、その車を見たが、年季の入った車の前バンパーは傷だらけ。挙句の果て、「そんなところまで車を入れてないし。」とジェスチャーをしながらうそぶく。「あんた、○○てんの違うか?」思わず僕は罵った。すると、その言葉が癪に障ったのか、「俺にそんなことを言うあんたが○○てるやろ!」と返してくる。埒があかないので警察を呼ぶことにした。そうこうしていると、男性の妻と知人と称する女性が先に入っていたハンバーガーショップから出て来て、大きな指輪をいくつもしたその手で黒いシミを触りながら、「これ、こすり傷とちゃうな。」と指輪をボディに当てながら妻がのたまう。状況を全く知らない知人女性も僕に対して、「そんな大きな声を上げなくても。」とまさに傍観者風情で、購入したばかりの高級車を傷つけられた男の気持ちなんかどこ吹く風である。(つづく)