院長のコラム

馬鹿にしないでよ、そっちのせいよ Part II

自分が興奮していることは自覚していた。けれども、暖簾に腕押し状態の相手に憤っても何も解決しない。冷静な方の僕が思いついた、「そうや、(我々の車には)前後のドラレコ(ドライブレコーダー)が装着されていたやん。」警察が来るまでの間、ディーラー担当者に電話をかけて事情を説明し、ドライブレコーダーの再生方法と今回のような事案の対処方法を聞いた。所詮保険に過ぎないと思って付けていたドラレコが初めて活躍する場が訪れた。携帯電話をスピーカーモードにして、ディーラー担当者の言う通りドラレコを車内で確認した。残念ながら、当たった瞬間の画像は捉えられていなかった。けれど、高齢男性の運転する車が我々の車に相当接近する映像、そして、妻の「当たった!」の声が残されていた。

二人の警察官がパトカーでやってきて、氏名と住所の確認、双方の言い分を聞く型通りの実況見分が行われた。しかし、黒いシミを含めて衝突痕があるかどうか判断出来ないとの結論。何も起こっていなければ夫婦それぞれに仕事があり、こんな状況から一刻も早く逃れたかった。「当てた、当てていない」の不毛な論議を少しでも打開するため、さらに時間はかかるけれども交通鑑識班を呼ぶことを了承するよう警官から諭された。事件発生から約2時間、寒風吹きすさぶ中、鑑識班の詳細な実況見分の結果が出た。鑑識班の一人が僕に、ボディに付いた黒いシミを拭くよう催促した。なぜなら、黒いシミは加害者側のタイヤ痕で、タイヤ痕なら拭けば消えるとの見立て。拭いて消えれば、まさにタイヤが当たった証拠になるとのこと。水泳で濡れたタオルで思い切って拭った。すると、消えるどころか黒いシミはビヨーンと伸びる。何度も拭いていたらシミは消え去った。それは、我々の主張が認められた瞬間でもあった。

「こちらの車にそちらの車が当たりました。」と鑑識が結論づけてくれた。にも関わらず、その後、夫婦から謝罪の言葉は一切なかった。高齢夫婦より若い知人女性も、妻に向かって「旦那さんの思うようにすれば。」と加害者夫婦を諌めることもなく投げゼリフを残すだけ。事故の状況が認定された以上、後は民事、保険会社同士の問題になる。依然として事態を飲み込めていない夫婦の夫には「(今後のため)互いに免許証をカメラに撮っておきましょう。」と声をかけ、妻には「今からすぐ保険屋さんに連絡してちょうだい。」と要請した。保険代理店の担当者は僕のことを知ってくれていて話が早かった。彼の指示に従って、すぐさま関連する販売店に車を持ち込んで見てもらった。幸運なことに、損傷はほぼなかった。その旨を保険代理店に伝えるとともに、新車を傷つけられたことに対して被害者が憤っていることを伝えて欲しいと注文した。

寒中、長時間見分に付き合った妻は、その後体調を崩した。しかも、互いに仕事に遅れ直接的被害を、妻は遅れた仕事のため家事までも遅れ、僕と息子が間接的に被害を被ることに。公私に渡り被害を受け、しかも心身のバランスまで崩すことになっても、加害者からは何の連絡もない。高齢者による車の事故は後が立たない。そうは言え、80以上の高齢者を十把一絡げにして免許証を取り上げろと言うつもりもない。この交通社会という土俵には、こちらが気をつけていても、こちらが何をしていなくても、不意に襲ってくる輩がいることを改めて理解した今回の事案である。まさに、「渡る道路は鬼ばかり」を認識するとともに、自身が鬼になる可能性があることも胸に刻んだ。

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