院長のコラム

驚異?脅威?のカーテン屋さん(前編)

建築家の千葉学さんとは20年来の付き合いとなる。この間、4物件、1店舗の設計をお願いしてきた。冗談めかして、「次は別荘をお願いしますよ。」なんて言っている。当地は風光明媚な温暖な地域である。長生きする自信はないが、もし生きながらえて隠居生活を送るなら、断捨離して、海辺の小ぢんまりとした家で、終日海を眺め波の音を感じて生きていきたいと思っている。そして、もし認知症になるか人手を煩わせるような身体状況になれば、自分が建てた介護施設に入居するつもりでいる。自宅もクリニックも自分の想いを千葉さんに委ねた。介護施設も同様である。他の誰のためでもなく、自分の終の棲家としてお願いした。

今年4番目となる木造2階建てのデイサービスが完成した。外観は、周囲の建造物に合わせて1階は黒、2階はシルバーのガルバリウム仕立てになっている。1階はデイサービス、2階はスタッフルーム兼倉庫、スタッフの意見が十二分に取り入れられた動線に無駄のないスペースになった。予算が限られていたため、構造体がありのままむき出しになり、2階の床も無垢材にツヤ塗装しただけのものになった。その化粧っけのなさが返って潔く、木の温もりと空間の広さを感じさせる。とはいえ千葉さんのことである、いつものように遊びが施され、二階の壁一面ベンガラ色になった。ベンガラは漢字で弁柄と記し、黒い赤みを帯びた茶色を言うらしい。黒、赤、茶色、不思議な色の組み合わせをなぜ千葉さんは選んだのだろうか。「ここには、この色が良いと思います。」と千葉さんに言われたら、内心大丈夫?と思いながら、「意外と良いですね。」と承服せざるを得ない。なぜなら、千葉さんの意見を取り入れて間違いはなかったから。

建設中、千葉さんは今回のデイサービスに何かを感じとったようだ。「千葉が、お勧めしたいカーテンがあります。」と千葉事務所担当者がしきりに妻に連絡してきた。今回の案件の窓口は妻で、僕はすべてを妻に一任していた。予算がない中、女性らしい感覚で数十万もするカーテンはばっさり一蹴していた。地元のカーテン屋さんに見積もりを取り、千葉さんが提案するカーテンの五分の一以下のもので進めていた。千葉さんは、使用部材や素材のことで大胆な提案をしてきても、家具やカーテン等調度品のことまで介入してくることはあまりなかった。ダメよダメダメと何度説明しても、千葉事務所担当者は「千葉が、お勧めしたいカーテンがあります。」と風に揺らめくカーテンの画像まで送ってくる。「千葉さんは今回、何でカーテンにこだわるんやろ?」、彼の真意を夫婦で汲み取れないでいた。(つづく)

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