1日1食生活
私の健康法
過日、クリニックに電話が突然かかってきた。取り次いだ受付スタッフが怪訝そうな顔で「スパという雑誌社の方らしいんですが、先生に話を聞きたいとのことだそうです。」と、要件を伝えた。小林よしのり氏がゴーマニズム宣言を連載していた頃「SPA」を購読していたので、雑誌の素性はわかっていた。けれども、何の目的か全く思い当たる節がなく、「広告の依頼かな、零細企業に何の用事だろう?」「ひょっとして、企業名を名乗った新手の詐欺?」、狐につままれたような気分で恐る恐る電話に出た。
「先生は1日1食らしいですね。サラリーマン向けに、1日1食でも仕事が乗りきれるという記事を書きたいのですが、少しお話を聞かせてもらえませんでしょうか。」との要件だった。ペテン師からの電話を予想していたので拍子抜けしてしまった。「ああ、それくらいなら大丈夫ですよ。」と二つ返事で電話取材に応じた。
僕が1日1食生活を送るのは、自分の主義主張を実践して普及させるためではない。医師ではあるが、医学的根拠はないに等しいし根拠を求めたこともない。1日1食生活は、自分の日常の生活リズムと経験から導かれた結果である。
当診療所は、内視鏡検査を主体としている。「その日に出来る検査はその日に行う」がモットーなので、予約外の方もどんどん受け入れている。当然のことだが、内視鏡検査を受ける方は食事を摂っていない。皆、空腹のままで検査を待ちかねている。その患者さんを目の前にして、「昼食の時間なのでしばらく休憩します。」とは到底言えない。黙々とただひたすら検査をするしかない。患者さんからも「先生、ご飯を食べなくて大丈夫ですか。」と声をかけられるが、不思議なもので、ひたすら打ち込んでいれば集中力が途切れないし空腹感も覚えない。
朝八時から開始した仕事は、大体夕方五時には終える。約24時間食事らしい食事を摂っていないプチ断食に加えて仕事を終えた達成感も加わり、帰宅した頃には激しい空腹感に襲われる。食べたいものを食べたいだけ摂取するが、その際気をつけているのは、できるだけ時間をかけて食事を摂るようにしている。お酒を飲みながら、飲むお酒と同程度のお茶を飲みながら、1時間以上かけて食べるようにしている。これも経験から得た知見で、一気に食べるとお腹が一杯になっても満足感が得られず、貪り食うことが分かったからだ。
休日は食欲に任せて食べるようにしているが、どうしても脳の方が反応してしまい、所謂食事時間に3食食べることが多い。3食食べると、だらだらとテレビを見ては食っちゃ寝えの自堕落な生活になり、休日なのに逆に倦怠感を募らせることになる。食事は僕にとって、オン・オフ切り替えのサインでもある。
「1日1食で大丈夫ですか?」色んな方から何度も聞かれるが、一言「全くもって大丈夫です。」と声高に返答している。開業すると、経費で美味しいものを食べられるようになるしストレス発散目的で食べる機会が多くなるので太るよ、と聞かされていたが、この8年間体重・ウェストはほとんど変わっていない。心配症なので定期的に血液検査を受けているが、どの値をとっても惚れ惚れするくらい完璧な値である。開業時と比較して約2.5倍の内視鏡検査をさせていただいているが、断ること無く、むしろ余力を持って対応出来ている。平日の1日1食生活が功を奏していると考えている。
けれども、人に押し付ける気はさらさらない。十人十色の生活リズムがあるだろうし、職種によっても食事時間は大きく異なるだろう。よく言われる、3食きちんと食べるのが健康の基本、という考えは間違っていると僕は感じている。3食食べるなら、それに見合ったカロリー消費をしなければならない。要は、カロリーの供給と消費のバランスが整っていればいいのである。それを確立できた人が真の意味で健康的と言えるのではないか、そう感じている今日此の頃である。