17歳の胃癌(2)
迷医の懺悔
自分と同年代に「堀江しのぶ」というタレントがいた。確か僕が医大5年生の頃、スキルス性胃癌のため23歳の若さで亡くなられた。そのニュースを聞いた時、同世代だけに強い衝撃を受けたことを鮮明に覚えている。当時、ピロリ菌の存在は分かっていたようだが、ピロリ菌と潰瘍・胃癌の因果関係は明らかではなかった。当時、ストレスによる攻撃因子(胃酸)の増強が潰瘍の原因と習ったし、ストレスと胃癌の関連をまことしやかに言う先生もいた。だから、堀江さんのニュースを聞いた時、若いとは言えストレスが極度にかかったのだ、自分も気をつけなければと思った。今から考えると、おそらくピロリ菌感染症があり、その背景胃粘膜は鳥肌胃炎だった可能性が高い。
17歳の胃癌患者さんの治療選択には苦慮した。当時、画期的な内視鏡治療が開発され普及してきた時期ではあったが、まだまだ未分化型癌に対しての内視鏡治療にはコンセンサスがなかった。5mm程度の癌に対しての外科的手術は過剰治療に思えたし、場所が場所だけに手術をすれば胃の3分の2を切除することになる。まだまだ成長期にある高校生、しかも女子高生の腹部に大きな手術痕を残していいものだろうか。 以上のメリット、デメリットを両親に充分に伝えて、もちろん自分の家族であればという私見も交えて説明し、家族は内視鏡治療を選択した。 今回の一連コラムを読んだ方の中には、僕のことを名医のように思う方がいるかもしれないが、自身は迷医を自覚している。自分の未熟な診断能力のため、自分の不遜な態度・傲慢な発言のため、不愉快な思いをさせた人は決して少なくないと自覚している。実際、訴訟の対象になったこともある。 |