DREAMS COME TRUE
医学部を卒業し研修先に選択したのが北海道旭川。それから釧路、岩内とたった七年間の北海道生活。それでも第二の故郷と思えるくらい印象深い。自分と亡き母が生まれた地、そして山形出身の父が過ごした思い出の地。脳裏に焼き付いた両親の言葉が僕を北の大地に誘った。すべてが新鮮だった北の国生活。当時、僕の日常生活に溶け込んでいたのがDREAMS COME TRUE(いわゆるドリカム)。彼らの音楽と僕の道内生活が全てにおいてリンクした。当時よく聞いていたのがアルバム「The Swinging Star」。印象的だったのは楽曲「あの夏の花火」。歌詞に「蒸し暑い」という言葉があるにはある。けれど全く暑さを感じさせない。北海道で観た花火の印象と合致した。一番の思い出の曲は、学生時代に内地で聞いた「雪のクリスマス」。雪国生活で想像を上回る楽曲通りの風景があった。
次に思い出の曲は「朝がまた来る」。ドラマ「救命病棟24時」の挿入歌だったらしい。ドラマを見ていないから余計な思い入れがない。純粋に楽曲の印象のみ。ちょうどその頃、父が亡くなった。傷心の気持ちを抱えながら、長男にも関わらず家督を継げなかった忸怩たる思い。「自分の将来は一体どうなるのだろう」、新天地に単身赴任で飛び込んでいった心もとなさ。川崎医科大学に通勤する車から流れてくる「朝がまた来る」に、父がいなくなったことに対する空虚感、「それでも前に進んで行かなければ!」という使命感、ないまぜの感情が沸き起こった。この曲を聞く度に、当時の複雑な心境が今でも蘇る。
楽曲「何度でも」も「救命病棟24時」第3シリーズの主題歌。当時、子育てに翻弄されテレビドラマを観る習慣がなかった。この楽曲と関連する出来事はない。いつの頃からか、特徴的なイントロが流れてくると心が逸り、「頑張らなきゃ!」と心奮い立つようになった。大腸内視鏡検査は、患者に侵襲を強いる検査の一つ。術者には繊細さと大胆さ、そして最後までやり抜く粘り強さが求められる。十人十色という言葉があるように腸管の形態も千差万別。終始スムースに終えることがほとんど。しかし、時には患者も医師も苦戦することがある。先日、大腸検査に苦闘し諦めかけようとした時、突如としてこの曲が流れてきた。気持ちを切り替え、「検査を中途半端に終えることは出来ない!」と自身を鼓舞した。どうにかこうにかやり遂げることが出来た。
熱狂的なファンという訳ではないけれど、日常生活の中で何気なくふと繋がり続けて来たのがドリカム。「いつかコンサートに行ってみたい」とずっと思っていた。