院長のコラム

Feel Happy AND ILOVE YOU


この四十年で世界は激変した。一家に一台の固定電話が、今や一人に一台のスマホの時代である。それに伴い音楽環境も劇的に変化した。LPレコードからCD,何れにしてもショップにお気に入りの現物を買いに行かなければならなかった。出かける際には、ポータブルオーディオプレーヤーにダビングもしくは直近ならダウンロードしなければならなかった。それがいまや、スマホ一台を持っていれば何処でも何時でも好きな音楽を聞くことができる。この歳になれば、酒を嗜みながら懐かしの音楽を聞きたくなるものだ。ほんの少し前ならCDラックからお気に入りのCDを引っ張り出して、CDプレーヤーに入れなければ聞くことが出来なかった。酔っている時に限って手元が狂って、何度CDケースを破損したことか。

「Feel Happy」は、原田真二の1978年に発表されたファーストアルバムタイトルである。僕が十二歳の時、生まれて初めて買ってもらったアーティストのアルバムである。当時の記憶は鮮明に覚えている。父に連れて行ってもらった京都旅行で、乗ったタクシーで終始ラジオから流れていたのが「キャンディ」だった。以来、短い季節ではあったが熱烈な原田真二ファンになった。雑誌「明星」「平凡」を読み漁った。「Feel Happy」は何度も聞いた。中でも一番好きだったのが「黙示録」という曲だった。切ないメロディラインに、松本隆の暗示的で宗教的かつ壮大な歌詞、エンディングのフレンチホルンの音が子供ながらに染みた。この傑作アルバムは、LPレコードとともにいつしか忘却の彼方になってしまった。

「AND ILOVE YOU」は1982年に発表された発表された早見優のファーストアルバムである。当時はアイドル全盛の時代で、同期は石川秀美、堀ちえみ、松本伊代、小泉今日子、中森明菜、三田寛子と錚々たる面子がいる。中でも、バイリンガルで常夏のハワイをイメージさせる早見優が胸に刺さった。十六歳になっていた僕は小遣いでレコードを買った。梅雨時に購入したアルバムなので、雨、燃え盛る緑、梅雨明け、夏、太陽、通り雨と言った当時の空気が強く印象に残っている。このアルバムの中で一番のお気に入りは、夏のイメージが強いアルバムの中で異色のA面三曲目の「ゴンドラ・ムーン」である。思春期のやるせない乙女心を歌ったアップテンポな曲である。作曲は「異邦人」の久保田早紀で、切ない歌詞の世界観と絶妙に調和していた。アイドルに熱狂していた僕も、すぐその後、佐野元春、尾崎豊、浜田省吾のロック音楽にのめり込んでいった。

あれから約四十年、音楽を聞きたければCDもCDプレーヤーも要らない。オフコースの「眠れぬ夜」の一節「眠れない夜と雨の日には忘れかけてた愛がよみがえる」ではないが、切なさを覚えた夜と懐かしさを感じた日には忘れかけていた曲が蘇るようになった。純粋無垢な少年が今や、百戦錬磨の暴走中年である。もうあの頃に戻ることはできないが、「Feel Happy」や「AND ILOVE YOU」を聞けば当時の気分をいとも簡単に思い出すことが出来る。とうとう僕にも焼きが回ってきたのだろうか、懐かしさに耽ける秋の夜更けである。

長嶋雄一クリニックお問い合わせ

診療科目(内科・消化器科・胃腸科)
診察週

月・火

木・金
奇数週
(第1・3・5週)
8:00 ~ 16:00 8:00 ~ 16:00 8:00 ~ 15:00
偶数週
(第2・4週)
8:00 ~ 12:00
休診日︓第1・3・5週水曜日、第2・4週土曜日/ 祝・日曜日