院長のコラム

OTOKO NO SHI

2020.12.13

前回のコラムで、唐突にも三島由紀夫の名前を出してみた。これには伏線がある。2020年は、三島由紀夫の死から五十年になる。自決した十一月二十五日前後には、NHK及びEテレで特集番組が放送された。衝撃的な事件ということもさることながら、今も人を惹きつけてやまない魅力が三島にあるからこそだと考えている。亡くなった年、僕はまだまだ四歳、事件の記憶どころか自分が何をしていたのかさえ覚えていない。物心ついて事件のことを知った時、違和感はなかった。「男子たるもの、如何に生きるべきか!」、そんな覚悟を持つ前の時代、おそらく中高生時代だと思うのだが、三島に不思議と「男の美学」を覚えた。ちなみに、今は覚悟を持って生きているような物言いをしてみたが、実は相変わらずの風見鶏である。

三島に興味はあったが、作品を読んだことはない。「仮面の告白」を読みかけたが、どうも腑に落ちず断念した。その代わりと言ってはなんだが、随筆や関連本を読み漁った時期があった。人となりはもちろん、事件の背景を知りたいと思ったからだ。けれども、そんなことは絶対に不可能、痛切に感じた。そもそも三島由紀夫は天才である。凡人が三島を語ろうなんて、おこがましいにも程がある。そもそも、三島は四十五の年齢で自決することを予期して作家活動に取り組んで来た訳ではない。おそらく、ある時期を境に自らの死へのイメージを醸成し続け、帰結させたのがあの事件と考えるのが妥当だろう。その真相は本人しか分からず永遠の謎である。たらればの話をしても仕方ないが、もし三島がノーベル文学賞を取っていればどうなっていたのだろう?

十一月中旬、「三島由紀夫が企画し出演した写真集『OTOKO NO SHI』が、没後五十年の今年甦る。」、こんな記事をネットニュースで見つけた。写真は篠山紀信、構成・装幀は横尾忠則、大きさはB2判(515x728mm)、初版五十部は篠山・横尾両氏の直筆サイン入りで、お値段何と税抜五十万である。写真集としては驚天動地の価格設定である。日曜の午後、「開運!なんでも鑑定団」の再放送を楽しみにしている僕的には絶好のお宝物である。と言っても、お値段何と税抜五十万である。思案した末、美術品としての版画を購入するという視点に変えてみたところ、すんなり受け入れることが出来た。オンライン注文なので、いつものように「カートに入れる」をポチッとすればいいのだが、さすがにこの時ばかりは押す指が震えた。十一月二十五日刊行予定日だったが、大幅に制作が遅れているようで十二月中旬に納品との連絡を書店から受けた。


三島が没して五十年の今年、新型コロナウィルス感染症の拡大で、世界は混迷・混沌の中にある。こういう状況の中、まだあまり表面化していないが、米中冷戦はもうすでに始まっている。コロナ禍が沈静化した時、日本の立ち位置が厳しく問われる事態になることは目に見えている。五十年前、「ここで立ち上がらなければ、憲法改正はないし、永久にアメリカの軍隊になってしまう。」と叫んだ三島は、何も変わっていない、変えようとしないこの国に何を思うのだろう。

 

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