S660(エスロクロクマル)
ホンダへの想い
今回は車の話である。かつて僕はホンダ派だった。F1でホンダが絶頂期だった頃は、ホンダの申し子と称されるアイルトン・セナが大活躍していた時期である。当時医学生であった僕は、F1のテレビ放送がされる日曜深夜、睡魔に襲われるまでテレビにかじりついていたものである。当時のホンダ車と言えば、スポーティ・躍動感・先進の技術・スムースなエンジンフィールなどなど、F1のイメージを引き継いでいた。トヨタのカローラを乗り継いでいた車に疎い父に、自分が乗りたいがため、無理やりホンダの「アコード」に買い替えさせた。当時のアコードはリトラクタブルライトが特徴的で、「シビック」と双璧をなすホンダを代表する車であった。車検を迎えて「ビガー」に買い替えた。ビガーはその後絶版となり、アコードも継続して販売されているようだが現在のアコードの形は知らない。
自身も医師になって、憧れだった「レジェンドクーペ」に乗り換えた。大きく取り回しが悪く、しかも3000cc以上のエンジンで燃費が悪いため、2年後にゴルフIIIのカブリオに乗り換えた。結婚してからは、妻の所有していた「CR-X」と2台体制になった。子供が出来大きくなると、さすがにカブリオでの乗り降りは困難を極めて「エディックス」に買い替えた。エディックスは1列目にも3人が乗れるという画期的な車で、デザインも秀逸であった。しかし、レジェンドクーペしかり、エディクスしかり、その他にもトヨタのプリウスに対抗して鳴り物入りで発売されたインサイト、一世を風靡したプレリュードやシティ、少し前にデザインがいいと感じたエアウェイブしかり、ホンダと言うメーカーは新しい車を作ってはディスコン(製造・販売中止)する会社というイメージがどうしても強い。しかも、F1から撤退して以降、かつての若々しいイメージはなく、ホンダというと、ミニバンやフィット、軽自動車のイメージくらいしかなくなった。エディクスを乗りかえて以降、ホンダのディーラーに足を運ぶことはなかった。
この初夏、介護事業所を立ち上げることになった。軽の福祉車両が必要なので、十数年ぶりにホンダのディーラーを訪ねた。福祉車両は選択の余地がなく商談はすぐに終わった。何気なく見ていると話題のS660のポスターがそこここに貼られていたので、いつ発売されたのか尋ねたところ、つい先日とのことだった。
北海道に住んでいた頃、先代とも言える「Beat」のマリンブルーの限定展示車を見た時、「これ絶対に欲しい」思わずディーラーに駆け込んで見積もりをとったくらいである。何とか頑張れば購入できそうだったが、一人で車を2台購入することの贅沢さや、雪の降る北海道でミッドシップレイアウトの幌のオープンカーを持つことの費用対効果を考えて泣く泣く購入を断念したのを思い出した。
冗談半分で「今から予約すれば、いつ納車されますか?」と聞いて、思いがけない返事が返ってきた。「うちの店舗の年間予約枠は5台で、もう埋まってしまいました。」「えっ?予約も出来ないんですか。」「そうなんですよ、何処の店舗も同様のようですよ。」、後日別の店舗に電話をかけたところ「今からなら再来年の枠の予約になります。」との返事だった。S660は年間生産台数が限られているので、このような状況が続くそうだ。
S660は往年のファンから絶大な支持を受けているようだ。今年からホンダはF1に戻ってきた。この秋にはアメリカで「NSX」が発売される。エンジンのホンダと言われたかつての勢いをホンダに感じるのは僕だけだろうか。これからのホンダがますます楽しみである。