クリニック紹介
建築家
治療行為を超えたホスピタリティ
建築家 千葉 学氏(新建築2007年7月号から)
資材置き場に囲まれた殺伐とした造成地、そんな敷地にこのクリニックは計画された。
ここから本当の意味で患者本位の病院のあり方を発信すること、そしてこの場所がいずれ小さな街へと育っていくための核となる病院であることが求められた。
平面は、診察室やレントゲン室などとラウンジが中庭を挟んで並び、外周部を巡る回廊で結ばれてできている。〈中略〉このような構成にしたのは、患者さんが長い時間を過ごす待合室を、廊下の延長ではなく、独立した部屋にしようと考えたからである。病院本来の機能ではないが、単なる治療行為を超えたホスピタリティ実現のために、そこは病院の中心である必要があった。もうひとつは、診察において最もプライバシーが必要な各部屋を、この殺伐とした環境から少しだけ守ってあげたいと思う一方で、今はまだ何もないこの土地に、老人ホームや集合住宅などが建って小さな街になった時、街の中心に、患者や医師や看護士が歩き回る光景があって欲しいと思ったからでもある。こうして病院は、全体が緩やかに繋がった空間になっている。先生の目がなんとなく行き届き、付き添いの家族が、離れても病人と一緒にいるような、そんな関係である。それはひとりでいることと誰かと一緒にいるような、そんな関係である。それはひとりでいることと誰かと一緒にいることの心地よさを同時に実現する豊かな空間でもあって、別荘にも成り得ていた。病院は、本来そういう場所でいいはずなのである。
プロフィール
千葉 学(ちば・まなぶ)
1960年 | 東京都生まれ |
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1985年 | 東京大学工学部建築学科卒業 |
1987年 | 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了 |
1987年 | 株式会社日本設計 入社 |
1993年~ | ファクターエヌアソシエイツ 共同主宰 |
1993年 | 東京大学工学部建築学科/キャンパス 計画室助手 |
1996年 | 長崎総合科学大学 非常勤講師 |
1998年~ | 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 助手 |
2001年 | 千葉学建築計画事務所 設立 |
2002年~04年 | 日本女子大学家政学部住居学科 非常勤講師 法政大学工学部建築学科 非常勤講師 |
2004年 | 東京理科大学工学部建築学科 非常勤講師 |
2005年 | 東京工学大学工学部建築学科 非常勤講師 |
2006年 | 首都大学東京(東京都立大学工学部建築学科) 非常勤講師 |
現在 | 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 准教授 日本女子大学家政学部住居学科 非常勤講師 |